3回生向けの半期の演習実験です。物質中の電子が織りなす量子力学的振る舞いを学ぶことを目的としており、その最も顕著な例として、マクロな量子現象である超伝導について学びます。特に、「超伝導の電子状態がどのようなものであるのか?」を理解することに注力し、先端実験装置を用いた薄膜素子の作製と極低温実験を通じた分光スペクトルの観測によって、電子対が媒介される機構についての考察を深めます。机上の勉強に留まらない実習によって、この先の卒業研究や大学院での研究において強相関電子系での非従来型超伝導に興味がある学生にも研究の一端に触れる良い窓口になるようなアレンジとなっています。
当課題演習B3について、説明スライドが
こちらから参照可能です。
輪講
週2-3時間の輪講形式の演習を通して、
について取りあげ学びます。特にBCS理論は超伝導の標準理論であり、エッセンスをしっかり押さえておきたいものです。
実験
『電子ビームを用いた超伝導薄膜接合素子の作製とトンネルスペクトル測定による超伝導エネルギーギャップの直接観測』
クリーンルームでの先端実験装置を用いた超伝導接合素子作製を行います。作製した接合素子については、3He冷凍機を用いた絶対温度 300 mKまでの温度域においてトンネルスペクトル測定を行い、Dynes関数の原著論文の紹介や実際の実験データ解析などを通じて、超伝導エネルギーギャップが形成される様子を調べます。超伝導ギャップ構造は電子対の形成機構と強く結びついており、非従来型超伝導の研究においても非常に重要な概念です。
これらの実習を通じて凝縮系物理に関する"研究の一端"を体験するとともに、より最先端の研究トピックや実験手法についても織り交ぜていきます。
超伝導という物質科学が示す最もドラスティックな物理現象に関心を持たれた方、是非、当課題演習を選択してみてください。
課題演習B3発表について
他の聴衆に分かりやすい発表に留意しましょう。特に2 では、次第に教科書にはない研究の世界の話に入っていきます。既に分かっていることもあれば、まだまだ分かっていないこともあります。輪講で学んだ従来型の超伝導と比較して、何が面白くて何が謎なのかを強く意識して調べてみてください。
レポート提出について
上記の発表を行った内容のうち、1についてをレポートにまとめ、電子ファイルで提出して下さい。余裕がある場合には 2についても記述していただいても結構ですが、あくまで主題は1の実験であり、こちらをできる限り充実させることに努めてください。提出にはLaTeXによるレポート作成を強く推奨します。(必須ではありませんが[a4j,11pt]{jarticle}、或いは[a4j,10pt,twocolumn]{jarticle}に準拠した形式に努めて下さい。)
参考までに、LaTeXソースはこちらの雛形を参照し、内容については適宜変更して下さい。
課題演習は、皆さんが近い将来、卒業研究 (課題研究) や大学院での研究を行うための準備をする場です。これからは、ただ与えられた課題をこなして出てきたデータをまとめるというレポートではなく
・その実験の何が重要なのか
・何を理解したかったのか
・何が面白い点なのか
といったことを強く意識し、これらを論文執筆や発表を通じて他者に伝えることも重要になってきます。イントロダクションや議論・考察ではこれらの点に留意し、レポート執筆に臨んでみて下さい。
後期レポート
仮提出: 2月3日 17:00 持参 (その場で修正点などの指示をします)
本締切: 2月10日 13:00 厳守 電子ファイルをe-mailにて提出
提出は笠原成、およびTA(佐藤、鈴木)の3名に送信してください。
参考図書
実験およびレポートについては
が参考となります。また、各課題については、ポイントを理解するには
の後半に参考となる章があります。それぞれの系については、
などが参考となります。詳細については各書籍中で引用されている論文や和文解説記事を調べることが重要です。 課題によっては書籍にはない新しい研究結果になっていますので、やはり論文を調べることが必要です。
平成25年度以前: 『錫玉を用いたジョセフソン接合作製とマイクロ波照射によるシャピロステップの観測』