当研究室で最近得られた研究成果の一部をご紹介します。

  1. 重い電子系超伝導体URu2Si2の磁束格子融解転移の発見
  2. パイロクロア超伝導体KOs2O6のラットリング転移に伴う渦糸分布の異常
  3. 重い電子系超伝導体URu2Si2の超伝導対称性の決定

重い電子系超伝導体URu2Si2の磁束格子融解転移の発見 ページのTopへ


第2種超伝導体に磁場をかけると、量子化された渦糸という形で磁束が侵入し、その渦糸同士に反発力が働くことから、格子を組むことが知られています。温度が100 K程度と高い高温超伝導体では大きな熱揺らぎのためにこの格子が融けて液体となる相転移が発見され大きな話題となりました。温度の低い超伝導体ではこのような融解転移は通常見られません。ところが、強い電子間相互作用のため有効質量が100倍近くにも増強された「重い電子系」とよばれる化合物では、極低温でも重い電子のために熱揺らぎの効果が驚くほど強められ、URu2Si2においてそのキャリア数の少なさとあいまって、1 K程度の極低温において磁束格子融解の相転移が発見されました。 (posted by TS)
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"Flux Line Lattice Melting and the Formation of a Coherent Quasiparticle Bloch State in the Ultraclean URu2Si2 Superconductor"
R. Okazaki, Y. Kasahara, H. Shishido, M. Konczykowski, K. Behnia, Y. Haga, T. D. Matsuda, Y. Onuki, T. Shibauchi, and Y. Matsuda
Phys. Rev. Lett. 100, 037004 (2008); arXiv: 0710.2382.


パイロクロア超伝導体KOs2O6のラットリング転移に伴う渦糸分布の異常 ページのTopへ

わが国で発見された比較的高い超伝導転移温度(9.6 K)を持つパイロクロア超伝導体KOs2O6では、その結晶構造にかご型の空間が存在し、その中でKイオンが動き回る「ガラガラ(赤ちゃん用のおもちゃ)」のようなラットリングという現象が起きている。超伝導転移温度より低い温度(約8 K)において、比熱のとびが見つかり、1次相転移の存在が最近明らかになってきた。この相転移ではラットリングの動きが変化しているのではないかと考えられている。この相転移近傍での超伝導体中の磁場分布を調べたところ、超伝導体中の渦糸の分布が1次転移以下で大きく変化することが明らかとなった。このことは、ラットリングが超伝導に少なからず影響を及ぼしていることを示しており、ラットリングと超伝導の関係を明らかにする上で重要な結果であると考えられる。 (posted by TS)

ShibauchiPRL2007.jpg

"Vortex Redistribution below the First-order Transition Temperature in the b-Pyrochlore Superconductor KOs2O6"
T. Shibauchi, M. Konczykowski, C. J. van der Beek, R. Okazaki, Y. Matsuda, J. Yamaura, Y. Nagao, and Z. Hiroi
Phys. Rev. Lett. 99, 257001 (2007); arXiv: 0710.5781.


重い電子系超伝導体URu2Si2の超伝導対称性の決定 ページのTopへ

強い強相関電子系では、しばしば反強磁性や強磁性などの磁気秩序と共存し、超伝導ギャップにゼロ点(ノード)があらわれる非従来型の超伝導が実現していることが知られている。重い電子系超伝導体URu2Si2では、他の超伝導体とは異なり、非磁性の「隠れた秩序」とよばれる相と超伝導が共存し、その機構解明に向けて多くの研究がなされている。最近、非常に純良な単結晶試料が育成され、それを用いた電気・熱輸送特性を調べた結果、特異的な超伝導状態にあることが明らかとなった。隠れた秩序相ではキャリア数が非常に少なく、電子とホールが同数存在する半金属的な電子状態であり、電子バンドとホールバンドで、ギャップのノードがそれぞれ点状のものと線状のものとを持つことが実験的に初めて明らかになった。この結果から、URu2Si2では、下図に示すようなカイラルd波の対称性を持つ超伝導が実現しているのではないかと考えられる。この対称性は時間反転対称性を破る新しいタイプのスピン一重項超伝導状態である。 (posted by TS)

KasaharaPRL2007.jpg

"Exotic Superconducting Properties in the Electron-Hole Compensated Heavy Ferimon `Semimetal' URu2Si2"
Y. Kasahara, T. Iwasawa, H. Shishido, T. Shibauchi, K. Behnia, Y. Haga, T. D. Matsuda, Y. Onuki, M. Sigrist, and Y. Matsuda
Phys. Rev. Lett. 99, 116402 (2007).