当研究室で最近得られた研究成果の一部をご紹介します。


2008年1月 重い電子系超伝導体URu2Si2の磁束格子融解転移の発見

2007年12月 パイロクロア超伝導体KOs2O6のラットリング転移に伴う渦糸の再配置

2007年9月 重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導薄膜作製に成功

2007年9月 重い電子系超伝導体URu2Si2の超伝導対称性の決定


重い電子系超伝導体URu2Si2の磁束格子融解転移の発見 ページのTopへ

第2種超伝導体に磁場をかけると、量子化された渦糸という形で磁束が侵入し、その渦糸同士に反発力が働くことから、格子を組むことが知られています。温度が100 K程度と高い高温超伝導体では大きな熱揺らぎのためにこの格子が融けて液体となる相転移が発見され大きな話題となりました。温度の低い超伝導体ではこのような融解転移は通常見られません。ところが、強い電子間相互作用のため有効質量が100倍近くにも増強された「重い電子系」とよばれる化合物では、極低温でも重い電子のために熱揺らぎの効果が驚くほど強められ、URu2Si2においてそのキャリア数の少なさとあいまって、1 K程度の極低温において磁束格子融解の相転移が発見されました。 (posted by TS)

OkazakiPRL2008.jpg

"Flux Line Lattice Melting and the Formation of a Coherent Quasiparticle Bloch State in the Ultraclean URu2Si2 Superconductor"
R. Okazaki, Y. Kasahara, H. Shishido, M. Konczykowski, K. Behnia, Y. Haga, T. D. Matsuda, Y. Onuki, T. Shibauchi, and Y. Matsuda
Phys. Rev. Lett. 100, 037004 (2008); arXiv: 0710.2382.


パイロクロア超伝導体KOs2O6のラットリング転移に伴う渦糸の再配置 ページのTopへ

わが国で発見された比較的高い超伝導転移温度(9.6 K)を持つパイロクロア超伝導体KOs2O6では、その結晶構造にかご型の空間が存在し、その中でKイオンが動き回る「ガラガラ(赤ちゃん用のおもちゃ)」のようなラットリングという現象が起きています。超伝導転移温度より低い温度(約8 K)において、比熱のとびが見つかり、1次相転移の存在が最近明らかになってきました。この相転移ではラットリングの動きが変化しているのではないかと考えられています。この相転移近傍での超伝導体中の磁場分布を調べたところ、超伝導体中の渦糸の分布が1次転移以下で予想以上に大きく変化することが明らかとなりました。このことは、ラットリングが超伝導に少なからず影響を及ぼしていることを示しており、ラットリングと超伝導の関係を明らかにする上で重要な結果であると考えられます。 (posted by TS)

ShibauchiPRL2007.jpg

"Vortex Redistribution below the First-order Transition Temperature in the b-Pyrochlore Superconductor KOs2O6"
T. Shibauchi, M. Konczykowski, C. J. van der Beek, R. Okazaki, Y. Matsuda, J. Yamaura, Y. Nagao, and Z. Hiroi
Phys. Rev. Lett. 99, 257001 (2007); arXiv: 0710.5781.


重い電子系超伝導体CeCoIn5の超伝導薄膜作製に成功 ページのTopへ

CeCoIn5はCeを含む重い電子系超伝導体で最も高い転移温度(2.3 K)をもち、新奇高磁場超伝導相(FFLO相)の存在、磁場誘起量子臨界現象、非フェルミ液体的な常伝導状態など、数多くの異常物性を示すことから、非常に注目されている物質です。現在まで、単結晶を用いた研究が行われましたが、バルク物性測定に測定手法が限定されていました。薄膜化することで光電子分光、トンネル分光など表面敏感な測定や、微細加工によるパイ接合などの位相分解可能な測定への道が開けることが期待されます。Ce元素は非常に酸化されやすいため、なかなか良質な薄膜を得ることが困難でした。私達は低温物質科学研究センター(寺嶋研究室)と共同で、分子線エピタキシー法という超高真空下での薄膜作製技術を用いて、バルク結晶と遜色のない超伝導特性を示すc軸配向薄膜の作製に成功しました。(posted by TS)

IzakiAPL2007.jpg

"Superconducting Thin Films of Heavy Fermion Compound CeCoIn5 Prepared by Molecular Beam Epitaxy"
M. Izaki, H. Shishido, T. Kato, T. Shibauchi, Y. Matsuda, and T. Terashima
Appl. Phys. Lett. 91, 122507 (2007).


重い電子系超伝導体URu2Si2の超伝導対称性の決定 ページのTopへ

強相関電子系では、しばしば超伝導ギャップにゼロ点(ノード)があらわれる非従来型の超伝導が実現し、その超伝導が反強磁性や強磁性などの磁気秩序と共存することが知られています。重い電子系超伝導体URu2Si2では、他の超伝導体とは異なり、非磁性の「隠れた秩序」とよばれる相と超伝導が共存し、その機構解明に向けて多くの研究がなされています。最近、非常に純良な単結晶試料が育成され、それを用いて電気・熱輸送特性を調べた結果、非常に奇妙な超伝導状態にあることが明らかとなってきました。隠れた秩序相ではキャリア数が非常に少なく、電子とホールが同数存在する半金属的な電子状態であり、電子バンドとホールバンドで、ギャップのノードがそれぞれ点状のものと線状のものとを持つことが実験的に初めて明らかになりました。この結果から、URu2Si2では、下図に示すようなカイラルd波の対称性を持つ超伝導が実現しているのではないかと考えられます。この対称性は時間反転対称性を破る新しいタイプのスピン一重項超伝導状態であり、今後のさらなる展開が期待できます。 (posted by TS)

KasaharaPRL2007.jpg

"Exotic Superconducting Properties in the Electron-Hole Compensated Heavy Ferimon `Semimetal' URu2Si2"
Y. Kasahara, T. Iwasawa, H. Shishido, T. Shibauchi, K. Behnia, Y. Haga, T. D. Matsuda, Y. Onuki, M. Sigrist, and Y. Matsuda
Phys. Rev. Lett. 99, 116402 (2007).